はじめて聴くブルース 9枚

「ブルース」と聞いて何を思い浮かべるかは人それぞれでしょう。


黒人の叫び、ロックのルーツ、渋い音楽、深くてクセがある等々。


「ブルース」という言葉それ自体は広く一般にも浸透していますが、
アメリカの黒人音楽として生み出されたブルースを実際に
聞いたことがある人はまだまだ少ないと思います。


ブルースはあらゆる音楽に影響を与えてきました。


この機会にブルースにずっぽりはまってみよう!


この特集では、ブルース初心者のかたに向けて、
スタイル別にそれぞれの「おすすめ」代表的名盤アルバムを
紹介したいと思います。

一つお断りしておきたいのはアーティストの経歴や突っ込んだ内容は
ライナーノートや他の本に詳しく載っているのでそちらに
おまかせしたいと思います。

この特集が、ブルース入門として、
そういった文献に目を向けるひとつのきっかけになれば幸いです。


<ブルース関連書籍>

ブルースCDガイド・ブック2.0
小出 斉
ブルースインターアクションズ
売り上げランキング: 28072
おすすめ度の平均: 5.0
5 素晴らしい仕事ですねぇ
5 うれしいガイドラインである
5 買いです、というより、必携。
5 素晴らしい!!


200CDブルース
200CDブルース編纂委員会
立風書房
売り上げランキング: 320959
おすすめ度の平均: 5.0
5 格好の参考書



ブルース決定盤―これがブルースだ! (オン・ブックス)音楽之友社、高地明 著)

ブルーズの世界―MUSIC COMPANION (Music companion)冨山房、三井徹・小出斉 共編)


戦前ブルース 〜 PRE WAR BLUES 〜


なんだ?この雑音は!
初めて戦前ブルースを聞くとそう思うかも。
現代のクリアな音質ばかりを聞いている人にとっては
しょぼい音に感じるのもいたしかたない。


しかし!


割り切ってしまえば この「シャー」がいい雰囲気を
醸し出す効果音となるのだ。


戦前ブルースファンには
「このシャーがいいんだよ、このシャーが!」
と、このスクラッチ・ノイズを愛でている人もいるらしい。


雑音とは無縁のはずのCDで雑音まみれの戦前録音を聞くのも
なかなかオツなものである。


とにかく奥が深いのが戦前ブルースの世界。


この泥沼的魅力に是非はまってみよう。
抜け出せなくなっても責任は取りませんけど。


ロバート・ジョンソン「コンプリート・レコーディングス」

伝説のブルースマンロバート・ジョンソンの全録音集。
29曲、全41トラック。
録音順に別テイクも含めて並べられているので、
そのまま聞くと同じ曲が続きちょっと退屈かも。
シャッフル演奏で曲をピックアップするのが
このCDを楽しむ極意。
はじめのうちはこの人の凄さを実感できないかもしれないが、
何度も聞くうちにわかってきます。
するめみたいなもんです。


エリック・クラプトンも、クリーム時代にカバーした『クロスロード』。


※後半につれ、徐々に盛り上がっていく『Preachin' Blues (Up Jumped the Devil)』。
 このギター演奏を生で見てみたい!

「RCAブルースの古典」

RCAブルースの古典
オムニバス ファリー・ルイス フランク・ストークス スリーピー・ジョン・エスティス サン・ボンズ メンフィス・ミニー メンフィス・ジャグ・バンド トミー・ジョンソン キャノンズ・ジャグ・ストンパーズ ダディ・ストーヴパイプ&ミシシッピー・サラ ウォッシュボード・サム
BMG JAPAN (2004-08-25)
売り上げランキング: 63066
おすすめ度の平均: 5.0
5 まさに古典として日本が世界に誇れる作品

1971年に わが国 初の本格的戦前ブルース・アンソロジーとして
登場した古典的アルバム。
CD化の際に7曲追加され、解説、歌詞とも全面的に見直され、
さらに強力に。
戦前ものではロバート・ジョンソンしか聞いたことがないという人に
是非このアルバムで戦前ブルースの多彩なスタイルを知ってほしい。
1927年から1946年の全49曲。

Catfish Blues - Robert Petway

ロバート・ペットウェイの「キャットフィッシュ・ブルース」。
ブギ連(内田勘太郎×甲本ヒロト)の
ナマズ気取り」は、
この曲を参考にしている、とのこと。


シカゴ・ブルース 〜 CHICAGO BLUES 〜

シカゴ。あこがれの街。
あのロバート・ジョンソンも「スウィート・ホーム・シカゴ」と歌った街。


1940年代には多くの人が南部ミシシッピからシカゴへと目指した。


シカゴ・ブルースの中心的人物、マディ・ウォーターズもその中の一人。


多くの人を魅了したこのシカゴでマディ・ウォーターズらによって
発展していったこのサウンドは、ブルースの典型的スタイルとなった。


シカゴ・ブルースの中心的レーベルである“チェス”のアルバムは、
多数 日本盤でも再発されているので深く追求できます。


マディ・ウォーターズ「ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ

ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ +8
マディ・ウォーターズ
ユニバーサル インターナショナル (2001-08-22)
売り上げランキング: 20404
おすすめ度の平均: 5.0
5 ロックのルーツ
5 私はファンです
4 ブルース通はこのレビューを見るな!
5 ロック・ブルーズ
5 「その世界の中での男前なのか」

物事には基本というものがある。
人間よく食べ、よく寝て、ちゃんと出す。


これ基本。


じゃあ、ブルースは?


マディを聞く。


しかも、このアルバムを。


これ基本。
正味のハナシが。


CDの帯にも ご丁寧に書いてました。


『ブルースとは何か? 答えはこれだ!」


ブルース・ファンでこのアルバムを聞いたことがない人はいません。


好き嫌いは別として。


しかもこのジャケット!


強烈!


ニオってきそうです。


泥水氏の人生がにじみでています。



※代表曲『フーチー・クーチー・マン』



※『ガット・マイ・モージョ・ワーキン』
 5分30秒付近から、ダンスしはじめるマディ!
 軽やかなステップが衝撃的。


Muddy Waters - Copenhagen Jazz festival (October 27,1968)


ハウリン・ウルフ「モーニン・イン・ザ・ムーンライト」

モーニン・イン・ザ・ムーンライト(2イン1)
ハウリン・ウルフ
ユニバーサル インターナショナル (2001-09-21)
売り上げランキング: 35840
おすすめ度の平均: 5.0
5 Bluesにどっぷり!!
5 安い
5 シカゴ武闘派のボス
5 燃え上がるブルース、ハウリンウルフ

濃さではこの狼氏も負けていません。


まずは圧倒されます。
その声に。


名前からして吠える狼です。


強烈なダミ声。


これぞブルース!と叫びたくなります。


機会があったらぜひ観てほしいのがウルフが歌っている映像。


デカイ図体を揺さぶりながら激しくシャウトする様に
ノック・アウトされること必至です。


※1分付近から、ローリング・ストーンズの紹介とともに
 テレビ番組に出演したハウリン・ウルフ
 4分20秒あたり、ウルフがノッテいます!




テキサス&ウエスト・コースト・ブルース 〜TEXAS & WESTCOAST BLUES〜


ミシシッピからシカゴへという流れとともに重要なのが
テキサスからウエスト・コーストの流れだ。


ミシシッピからシカゴの流れとは一味違った大物ギタリストを
数多く輩出した。


ダーティーなカントリー・ブルースを歌わせたらピカイチの
“不良オヤジ”ライトニン・ホプキンス。


数多くのフォロワーを生み、B.B.キングもアイドルとして
名を挙げるTボーン・ウォーカー。


日本で演奏中に亡くなった、ギャングスターの はしりともいえる
ジョニー・ギター・ワトソン。


無骨なギターを聞かせるロウエル・フルスン等
個性的なブルースマンが多数存在する。


ライトニン・ホプキンス「モージョ・ハンド」

モージョ・ハンド(コンプリート・セッション)(紙ジャケット仕様)
ライトニン・ホプキンス
Pヴァインレコード (1998-07-25)
売り上げランキング: 32474
おすすめ度の平均: 5.0
5 非常に印象的なジャケット
5 見よこのグーパンチ。

ブルースといえば、このジャケット。
強烈なインパクト。
サウンドも、もちろん強烈。

サングラスでアコギをかき鳴らし、これぞブルースマンといった
風貌で演奏されるダーティーなブルースには深い味わいがある。


※代表曲『モージョ・ハンド』


Tボーン・ウォーカー「モダン・ブルース・ギターの父」

モダン・ブルース・ギターの父
T・ボーン・ウォーカー
EMIミュージック・ジャパン (1995-11-08)
売り上げランキング: 28626
おすすめ度の平均: 4.5
3 テキサスブルースのルーツをさがしていて購入しました
5 「小粋です」
5 お手軽ベスト盤
5 洒落っ気たっぷり、程よい濃さ。
4 以外と地味な”戦後ジャズ”

モダン・ブルース・ギターの父といわれるTボーン・ウォーカー。
彼の残した録音を聞けばすぐに分かるが、
どこかで聞いた事があるギター・フレーズのオンパレード。


彼の影響力がいかに強かったかがわかる。


昭和17年〜22年の音楽がいまだに多くのギタリストに
直接にしろ間接にしろ影響を与え続けているとは驚きである。


1942年〜1947年録音の14曲。
初期のTボーンの決定盤というべき作品。


モダン・ブルース 〜 MODERN BLUES 〜

BBキング登場以降のブルースは ぐっと洗練され、
ダウン・ホーム・ブルースに対して
現代的なブルース〜モダン・ブルース と呼ばれ、主流となっていった。


ある意味、はじめて聞くにはこのモダン・ブルースが
一番聞きやすいだろう。


同じキングという姓だった、BBキング、フレディ・キング、アルバート・キング
三大キング、ザ・スリーキングスと呼ばれ、
三者とも後のミュージシャンに多大な影響を与えた。

BBキング「ライヴ・アット・ザ・リーガル」

Live at the Regal
B.B. King
Universal / Island (1997-07-29)
売り上げランキング: 8079
おすすめ度の平均: 5.0
5 いやーまいりました。
5 Everyday I have the blues.
5 万人が認めるブルース・ライヴの最高傑作
5 まいったなぁ・・・
5 この頃のBB Kingは・・・

1996年の5月、ブルーノート東京にBBキングを観に行った。
それまで彼のアルバムは1、2枚しか聞いたことがなく、
とりあえず行ってみるか、みたいな軽い気持ちだった。


しかし!


最初のギターの音だけでブッとんだ。


本物だ!


涙が出そうになった。


ギターの音が、そこらのギタリストとは全く違うのである。
深く、まろやかで感情を持っている。


そのギターと並んで素晴らしいのが歌だ。
1925年生まれだから、当時70歳を超えているというのに
声のでかさ、歌のうまさが衰えていないというのは驚きだ。


そういったライブでの凄さを知りたければ
このアルバムがオススメだ。


1964年11月21日、シカゴのリーガル劇場での熱いライブ。
BBキング39歳、脂が乗り切っているときのライブである。


観客の盛り上がりも最高潮。


一家に一枚の大名盤だ。


※ギターソロを弾いているときの表情がいい!




ロック/ホワイト・ブルース

エリック・クラプトン「フロム・ザ・クレイドル」

フロム・ザ・クレイドル
エリック・クラプトン
ダブリューイーエー・ジャパン (1994-09-25)
売り上げランキング: 13526
おすすめ度の平均: 5.0
5 弾きまくってます
5 やっぱりギターの神様でした
5 ド迫力の傑作カヴァーアルバム

ブルースを様々なスタイルで演奏し続け、約30年、
遂に全曲ブルースのカヴァーというアルバムを発表した。
そのほとんどをオリジナルに忠実に演奏している。


彼の演奏は30年前とどう違うのだろう。


ギターの腕は30年前からすでに超一流である。
格段の差が見られるのは歌唱力だ。


確実に歌に深みがある。
ブルースの似合う声になっている。


ギタリストとしてもボーカリストとしても
素晴らしい才能を持つにいたったのだ。


また、ほとんどオーバーダビングをしていない
スタジオライブ録音のため、
スピーカーのむこうから情熱がじかに伝わってくる。


いきなり昔の録音からブルースを聞きはじめるのはちょっと、
という人は、このアルバムからブルースを聴きはじめるのも
いいかもしれない。


そのあとは是非、原曲までさかのぼって聞いてみよう。


※オーティス・ラッシュのカバー『Groaning The Blues』。
 2分50秒付近から始まるギターソロは圧巻!

ローリング・ストーンズ「12X5」

12X5
12X5
posted with amazlet
ザ・ローリング・ストーンズ
ユニバーサル インターナショナル (2002-11-09)
売り上げランキング: 86246
おすすめ度の平均: 5.0
5 思い出のアルバム
5 今回のリマスタで最高のリマスタ
5 目玉はこれだ!


ストーンズのメンバーにとって憧れだった“チェス”。


マディ・ウォーターズハウリン・ウルフ等、
ブルース、R&Bの名作を世に送り出したレコード会社だ。


そのチェス・スタジオで録音されたトラックを含む本作は
ストーンズのルーツがよくわかる作品。


ストーンズが『シンディグ』というTV番組に出演した時、
彼らはハウリン・ウルフが出なければ自分たちも出ないといった。


しかし、白人たちの反応は「それは誰?」というものだった。
当時のアメリカ白人聴衆はブルースマンの名を知らなかった。


結局、ストーンズらイギリスのロック・バンドが競い合って
ブルースを取りあげたことが、
彼らを白人聴衆に紹介することになったのだ。


マディ・ウォーターズのカバー『I Just Wanna Make Love To You』

                                              • -


『はじめて聴くBLUES』
初出:「FREE PAPER YGP 002」
1997年4月8日 発行
2009年6月12日 改訂
2016年5月15日 動画更新
2019年3月21日 動画更新
2019年8月11日 動画更新
2019年8月18日 動画更新